ニムロッド

小説はどう読んでもいい。音楽はどう聴いてもいい。映画はどう観てもいい。俺はそんな態度の人間が大っ嫌いだ。いや、こう言うと語弊があるな。だって、受け手による「誤読」は作品を立体的に拡張する立派な作用だと信じてるから。言い直そう。俺は作者を軽んじる態度の人間が大っ嫌いだ。

そもそも創作物って何だか分かる? まあ分からないよね。一つのこと(価値観でもオブジェでも何でもよい)に対して偏執的なまでに向き合う美学。永遠へと漸近していく努力の結晶。それを創作物と言います。君たちは「わざわざ小難しく表現するなんて自分の力量を自慢したいだけ」なんて度々口にするけど、小学生でもわかる簡単な言葉で淡々と綴ったところで、真っすぐなジグソーパズルみたいにするりと心から抜け落ちていって、何の爪痕も残せないんだよ。彼ら彼女らが用いる伝達の手立てを知る。僕たちが日々勉強に取り組む目的の一つです。

何も僕は教養主義の上に胡坐をかいていたいわけじゃないんだ。僕だって教養はないし、行動しない人間は嫌いだし。とにかく、言いたいことは一つ。創作物に対して常に謙虚でいなさい。作品というものはそもそも作者の伝えたい主張があって成り立っているんだ。欠落を知っているのなら、せめてそれは不完全な伝達なんだと胸に刻んで鑑賞すべき。君たちなんかより何十倍も努力をしている作者たちを馬鹿にできる資格なんてないからね。結局、首から上だけでしかものを語れないくせして、その愚鈍さを誇るかのように振舞う人間が嫌いなだけなんだけどな。